天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 ディートハルトに反論しようとしたカークだったけれど、首を傾げて見つめられ、言葉は途中で止まってしまった。

(こ、これが王子の貫禄……?)

 ディートハルトはいつだって、穏やかだったし、ミリエラにもカークにも怒りを見せたことはなかった。にこにこしていたし、嫌なことがあっても、ディートハルトは自分自身の中で決着をつけてきたのである。

 その手際は見事なほどで、本当に七歳なのかと思うこともしばしばあった。それは今も同じ。

「ごめんね、ミリィ──ライナス、先に手を出したのは君だろ。ミリィに謝って」

 ディートハルトにそう言われたけれど、ライナスはむっとしたままだった。ミリエラの方を見ようともしない。

(……気持ちは、わかるんだけど)

 先ほどのライナスの発言で、痛いくらいにわかってしまった。

 彼はディートハルトがいなくなったことに胸を痛めている。そして、ミリエラがその原因だとも思っているのも。

 ディートハルトが錬金術を学びたいと考えるようになったのは、父やミリエラの影響が大だからそういう意味では間違ってはいないのだけれど。

「やだ!」

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