天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 なにしろ、ミリエラは中身は成人女性なのだから。このところ、肉体の年齢に精神が引っ張られているのだが、まだ、成人女性としての記憶も残っている。

 もしかしたら、前世の記憶は、そのうち完全に消滅してしまうのかもしれない。それなら、それでいい。この世界で生きていくには、必要のない記憶だから。

「仲間外れになんかしないよ。馬車を降りたら、僕と手を繋ごうね」
「はい、兄上!」

 ディートハルトの言葉には、ピシッと背筋を伸ばして返すあたり、わかりやすすぎてむしろ微笑ましい。

 最初からディートハルトと手を繋ぐつもりはなかったから、ライナスについては完璧にお任せしてしまおう。

 王家の人達を案内したのは、父がしばしば仕事を頼んでいる魔道具師の工房であった。

 工房に入る前に、父は子供達に注意事項を言い渡す。

 とはいえ、ミリエラとディートハルトはここには何度も来ているから、対象となるのはライナスだけであった。

「ライナス殿下、炉に近づいてはいけませんよ。危ないですからね」
「わ、わかった」
「それから、珍しいものがいろいろ置いてありますが、勝手に触れてはなりません」
< 122 / 279 >

この作品をシェア

pagetop