天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 満面の笑みを浮かべれば、父も緩やかに口角を上げる。

 艶やかな銀色の髪を首の後ろでひとつに束ねた父は、二十代後半という年齢よりも若々しく見える美(び)貌(ぼう)の持ち主である。

 どこか世捨て人のような雰囲気を漂わせているのは、幼い頃から身近な人を次々に失ってきたというのが大きいのだろう。涼やかな青い目は、今は真正面からミリエラを見つめていた。

「パパ、お茶にする? それとも、ご本を読んでくれる?」

 父の目に映る自分が、子供らしい笑みを浮かべていることに安(あん)堵(ど)しながらミリエラは問う。

 父には、前世の話はしていない。

 父が知っているのは、ミリエラが精霊に愛されているということ、錬金術については、天才と呼べる素養があること、そしてミリエラは父を愛しているということだけ。

 今後も前世の記憶については話すつもりはない。話したところで、日本に戻れるわけでもないのだから、父に知らせる必要もない。

 ──ただ、ひとつだけ。

< 13 / 279 >

この作品をシェア

pagetop