天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 オーランドの友人達がカークに渡したのは、たとえば、強盗と戦った時に壊れてしまった剣についていた飾りだの、魔物退治に行った時に入手した魔石や鉱物など、大人の目から見たらたいした品ではない。

 けれど、カークのような子供にとっては、ひとつひとつにまつわる話が、大切な宝物でもある。

(……だいぶ、誇張された話も混ざっているんだけどね)

 と、ミリエラは話半分以下で聞いているのだが、あえてカークの前では言わない。

 だって、ひとりで百人を相手にし、勝利した騎士なんて、そうそう出現するわけないではないか。

 そんな強者がいれば、絶対にグローヴァー領にまで噂は伝わってくるし、王宮で彼を称賛するための宴が催されるだろう。

 けれど、娯楽の少ないこの世界の子供達にとっては、そういった話が最高の楽しみでもあるのだ。

「……すごいね!」

 今もドラゴンを三体同時に相手にして勝利を収めた時、ドラゴンの腹から出てきた指輪をもらったんだと自慢しながら歩いているカークに、ディートハルトはなんとも言えない笑みを向けている。

(あ、ディーは誇張されてるって気づいてるのね)

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