天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 父を独占できる機会というのは、実はそう多くない。

 屋敷の仕事部屋にいる時は、父の指示を仰がねばならないことがあれば、すぐに執事やニコラが入ってくる。

 仕事を終えたあとも、ミリエラを寝かしつけると父はすぐに仕事に戻ってしまうことも最近は多いため、こうやって手を繋いで歩くというのは久しぶりだった。

「パパ、すごい! ジャグリングしてる人がいる!」

 今、広場の中央ではジャグリングが披露されていた。

 十近くのボールを器用に操り、時には空中でぱっと消して見せることもある。

 手品には種も仕掛けもあるものだから、そこで種を追求するような野暮な真似はしない。そもそも、ここは魔術が存在する世界なのだし。

「本当だ、すごいね」
「パパ、座って見ましょう」

 父の手を引っ張り、踊るような足取りで階段を下りていく。座席に座ることが習わしなのか、見えないと騒ぐ人はいなかった。

「……わあ!」

 父と並んで座り、ぎゅっと手を繋いだまま、ジャグリングを見物する。今、ジャグラーが操っているボールはふたつだけだった。

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