天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 ミリエラはお菓子程度ではつられたりしないのだが──ディートハルトやカークといった仲良しが渡してくれる時は別として。

「失礼、今日は娘とふたりで過ごすと決めている」

 父はむっとした顔でミリエラを引き寄せた。ミリエラは父の陰に半分隠れるふりをしながら、相手の観察を続ける。

「そんなことをおっしゃらずに」

 ラント伯爵令嬢は、父が断っているのも構わず腕に手を掛けようとした。父に冷たくあしらわれてもめげないあたり、かなりの難敵であると見た。

(──アウト!)

 父が嫌がっているのに、無理やりに接近してきた段階で、ミリエラにとっては敵である。

(風の精霊達、お願い!)

 エリアスを呼び出すまでもなく、風の精霊達に頼む。

「きゃああああっ!」

 不意になぜか彼女ひとりだけ突風に巻き込まれ、かぶっていた帽子が遠くに飛んで行った。彼女の視線が帽子に向いた瞬間。

「パパ!」
「わかった!」

 素早くミリエラを抱き上げた父は、その場から一気に逃走する。

 父の逃げ足は驚くほど速かった。周囲を見ている人達の驚愕の目も気にすることなく、長い脚で一気に石段を駆け上る。

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