天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 父に渡すマフラーを編むには、ミリエラの腕はまだまだ程遠い。木陰が心地いいテラスに編み物の道具一式を持ち出して、練習を始める。

(……難しいな、本当に)

 慎重に編んでいるつもりだけれど、小さな手は想像以上に不器用なのか、思わぬところに引っかかってしまう。

 急いで編もうと思わず、丁寧に、丁寧に。

 ニコラみたいに針先が飛ぶように動くまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。お喋りの相手が欲しかったから、エリアスとフィアンを呼び出すことにした。

「──人間は、そのようなものを作るのだな」

 あいかわらず口調は尊大なフィアンであったけれど、ミリエラの手の動きには興味津々だ。じっと顔を近づけのぞきこんでくるのでかなり邪魔である。

「フィアン、それじゃ見えない。一歩、下がって」
「そうか、そうか、それはすまなんだ」

 嘴がカチカチと音を立てたのは、笑ったのだろうか。素直に一歩後退したフィアンは、その場に腰を下ろす。長い首で、ミリエラの頭上から手元を見つめているようだ。

「人間には毛皮がないからな、冬は寒いのだろう──我達は、気温の変化などどうということはないのだがな!」
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