天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 貴族の屋敷に訪問する際には、まずは約束を取り付けるのがマナーだ。もちろん事前アポは普通の家でもマナーだろうが、貴族の場合にはそれがより厳格なものとなる。

 勝手に押しかけてくる段階で、ろくな客ではないということだ。

 メイドが中に通したということは、無視してはならないという客なのだろうけれど。

(……誰だろうな、本当に)

 どこに通せばいいかちょっと迷い、客間に通してもらうことにする。メイドが通してしまった以上、放置というわけにもいかない。

 正式に訪問の約束を取り付けてきた相手ではないから、こちらもきちんと身なりを調える必要はない。編み針をバスケットに片付け、そのまま応接間へと向かう。

「まあ、ミリエラ様。お目にかかれて嬉しいですわ!」
「……昨日の」

 扉を開けたミリエラは、思わずつぶやいた。

 昨日、父とのデートを思いっきり邪魔してくれたラント令嬢である。ミリエラの眉が上がった。

(──家にまで押しかけてくるなんて!)

 この段階でミリエラの心情はものすごく悪い。

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