天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 相手はまだ若いのだし、大目に見てやってもいいのではないかと頭の後ろからささやきかける声が聞こえてくるのではあるが。

「……ラント伯爵令嬢、なにかご用ですか? 父に代わって承ります」

 一息にそう言えば、相手は驚いた様子で目を見張った。

 たしかに、六歳の少女の口から出る言葉ではないだろう。落ち着いた様子を意識して演出しながら、ミリエラはゆっくりと彼女の正面に腰かける。

「父からは、今日はお客様がお見えになると聞いておりません。緊急のご用件でしょうか?」

 父が、冷酷と評される時の表情を思い出し、それを真似しながら相手を見つめる。ミリエラの様子に、相手は完全に気圧されたようだった。

「そ、その……ミリエラ様は、新しいお母様が欲しいと思ったことはありませんの?」

 強張った笑みを口元に浮かべ、首を傾げて問いかけてくる。その状況で、これだけ言える精神はむしろ称賛に値するかもしれない。

「ありません。でも、父が結婚すると決めたのなら、邪魔をするつもりはありません。だって、その方が楽しいでしょう?」

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