天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 父との生活に満足はしているけれど、余人を受け入れないと決めているわけでもない。父の再婚は大歓迎である──条件付きではあるけれど。

「で、では──私なんていかがでしょう?」

 ラント伯爵令嬢は身を乗り出した。

(たしか、婚約者が留学先で他の人と結婚しちゃって、まだ独身なんだよね……)

 昨日、帰ってから貴族年鑑をちゃんと調べておいた。

 ラント伯爵令嬢は、代々続く名門伯爵家の令嬢である。長い春がたたったのか、十年前から婚約していた相手が留学先で他の女性と恋に落ちてしまった。

 彼の留学のために待たされていたというのに、捨てられてしまったのだから、気の毒な人と言えば気の毒な人だ。

 当時、社交界はずいぶん大騒ぎになったらしい──相手の男性が不誠実であるという点で。ラント伯爵令嬢に、同情する声も大きかったそうだ。

「ラント伯爵令嬢──ひとつだけ聞いてもいいですか」

 父の再婚を妨げるつもりはない。

 そこに嘘はないけれど。相手にはひとつだけ、気にかけておいてもらわねばならないことがある。

「あなたは、父とどんな関係を結びたいのですか?」
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