天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 自分が無茶な要求をしているのはわかっている。

 誰だって、結婚するならば自分を一番大切に想ってくれる人がいい。

 ──けれど。

 家族を失った父を支え続けた母。その母のことを忘れさせようとする人と一緒にいても、間違いなく父は幸せになれない。ミリエラはそう思うのだ。

「だから、ラント伯爵令嬢。あなたじゃ、ダメ」
「そ、そんなの──それなら、私」

 彼女はなおも言いつのろうとするけれど、ミリエラは首を横に振る。

 彼女の不幸には同情するけれど、そこにミリエラ達が巻き込まれなければならない理由もないのだ。

「玄関はあちらです。お帰りください。それから──今後は、きちんと約束を取り付けていただけます?」

 当家では、あなたの面会の申し込みは今後完全に断るでしょうけれど、と付け加えたかったけれど、それは飲み込んだ。

 実際に面会の申し込みをして、断られてから自分で納得した方がいい。

 それでも、彼女は引こうとはしなかった。

 立ち上がった彼女が、ミリエラの方へ一歩踏み出そうとしたその時、応接間の扉が勢いよく開かれた。王宮に行っていた父が帰宅したのだ。

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