天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 こちらも蕩けるような甘い声で、ミリエラは父に飛びつく。抱き上げられると、ふわりといい香りがした。

「客人がお帰りだ。お見送りしなさい」

 側にいた従僕に命じる。父が見送らないあたり、歓迎されない客であったと、わかりやすく使用人達にも見せかけている。

「……し、失礼いたしますわ」

 ようやくここで溶けたらしい伯爵令嬢は、そそくさと応接間を出ていく。こちらには、見向きもしなかった。

「今のパパ、ちょっと怖かったね」

 ミリエラは父の首に抱き着く腕に力をこめる。

「……そうか?」「うん。ちょっとだけ、だけど」「ミリィに怖がられるのは困るな」

 そう言う父の声音が本当に困っているから、ミリエラは父の肩にぎゅうぎゅうと顔を押しつけた。

 父が怖いのは仕方ないのだ。だって、母を忘れさせようとする人なんて、必要ない。

 今は前のように丸一日母の映像を見ているということもないけれど、時々、肖像画に向かって話しかけているのをミリエラは知っている。

(たしかに、彼女は気の毒なんだけど……)

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