天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 ちらり、と父の顔を見上げる。もしかして、父がなにか手を打ったのだろうか。追い詰めるようなことをしていなければ、いいけれど。

 父は、まだ、母を愛していると言った。だから、他の女性と交際したり結婚したりする気にはならないのだ、と。

 父の幸せを邪魔するつもりもないけれど、亡き母を想っていたいと言うのならば、気が済むまで想えばいい。父の気持ちに、横やりを入れることはできないのだから。

「どうした?」
「ううん。この間のお姉さん、あれから来なかったね」
「ああ──彼女か。ミリィは気にしなくてもいいんだ。二度と我が家には関わらないよう、丁寧にお願いしておいたから」

 ミリエラに向ける目はあいかわらず優しいのに、なんだかぞっとしてしまった。

(今、パパの見ちゃいけないとこ見ちゃった気がする……!)

 ここだけの話、グローヴァー侯爵家を敵に回すのはあまり得策ではないのだ。王国でも有数の才能を持つ錬金術師の家系。

 父が手を回せば、相手の家になんらかの不利益をもたらすことは簡単にできるだろう。

(……見なかったということで!)

< 204 / 279 >

この作品をシェア

pagetop