天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 ライナスがそう言うのなら、着けたままでもいいだろうか。

「寂しいなあ、兄上が行っちゃうの。僕も一緒に行ったらダメ?」
「それはちょっと難しいかな」
「だって、兄上が王様になるんでしょ? 錬金術の勉強なんかしなくてもいいのに」

 そう無邪気な顏で言われ、返答に困る。ライナスはまだ知らないのだ。ディートハルトが、王都を離れ、グローヴァー領で生活するようになった理由を。

(うーん、説明してもわかってもらえるかどうか)

 ディートハルト自身は意識していないのだが、ミリエラだけではなくディートハルトも同じ年頃の普通の子供よりは少し大人びている。

 それは、物心つく前に母を亡くしたディートハルトの生存戦略がそうさせたのかもしれなかった。

 母を亡くしてすぐ、今の王妃が来た。礼儀正しく振る舞ってくれたけれど、そこに実の母と同じ愛情は期待できない。

 彼女に気を遣うようにと幼い子供に強いる侍従達。

 嫌でも感じ取ってしまう。宮中の空気が、少しずつ嫌な方向に変化していくのを。

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