天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
「……ライナス殿下は今日なにしてたの?」
「僕が行くのが嫌だって……泣いてた」

 その時のライナスの様子を思い出したようで、ディートハルトは両手の拳を握りしめた。

(本当、王族って大変そう……)

 ディートハルトだって、本来なら王宮にいた方がいいに決まっている。

 マナを上手に扱えるようになった今、わざわざグローヴァー領で暮らす必要はないのだから。
けれど、彼が王宮を離れると決めたのは。

 ──いつか、ライナスとの間に訪れるかもしれない争いを回避するためのもの。

(……ライナス殿下にわかってもらうのは難しいんだろうな、まだ今は)

 良くも悪くもライナスは素直な子供だ。彼の思考は年相応のもの。

 大好きな兄が、またしばらく遠い所へ行ってしまうと知ったら、泣き喚くに決まっている。

「……ディー、左腕!」

 ふとディートハルトの左腕に目をやれば、先日ミリエラが贈った腕輪が輝いていた。

 ディートハルトがこれをつけているということは、ライナスも同じものを身に着けているのではないだろうか。

「ディー、ライナス殿下はこれ持ってないの?」
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