天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 ふたりの騎士がそれぞれの馬車に近づき、用心深く馬車の扉を開く。ひとりは無言のままだったけれど、もうひとりが声をあげた。

「ライナス殿下!」
「や、やめろっ! 放せ!」

 いたぞ、と次々に声があがり、ライナスが馬車から引っ張り出される。

「誘拐犯は?」
「いない、殿下おひとりだ!」

 やっぱり、と思った。

 ライナスは、どうにかして大人達の目を盗んで馬車の中に潜り込んだのだろう。ディートハルトと離れたくなくて。

 気持ちはわからなくないけれど、今、彼にそれを許すわけにはいかない。

「なんだよ、王宮内にいたんじゃん! ていうか、あいつ馬車でなにやってたんだ?」

 と、声をあげたのは状況をまったく理解していないカーク。

「ディー、行ってやれよ。ひとりで馬車の中にいるのは怖かったろ。ライナス殿下ちっちゃいもんな!」

 けれど、状況を理解していないわりに、適切な行動をとるのはカークのすごいところでもある。今も、ディートハルトの背中を押していた。

「……行ってくる」
「うん。早く迎えに行ってあげて」

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