天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 父の指さした先では、ディートハルトとライナスが向かい合って話をしている。その様子に、王妃は深々と安どのため息をついた。

 と、そこへ国王までやってくる。

「ライナスはどこにいるのだ?」
「こっちです、父上!」

 国王に向かってディートハルトは手を振り、それからそっとライナスの肩に手を置いた。

「こんなところにいるとは思わなかったよ。皆、心配したんだぞ」
「──だって、兄上、また行っちゃうから!」

 地団太を踏んで叫ぶライナスの気持ちが、少しだけわかってしまう。ディートハルトはますます困った顔になった。

「でもね、ライナス。僕は、グローヴァー領でたくさん勉強をしないといけないんだ」
「……だって」

 だって、と繰り返すライナスの目には、大粒の涙が浮かんでいた。やはり、ディートハルトに行ってほしくないらしい。

「だって、だって、だって、僕は」
「そんな風に泣かれると、僕だって困っちゃうよ」

 珍しくディートハルトが子供っぽい口調で言うから、思わずくすりと笑ってしまった。いつもの彼は、年齢よりもずっと大人びた様子を見せるというのに。

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