天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
(……私と彼の関係が、少しでもよくなればいいと思ってのことなのかな)

 ディートハルトの心配りっぷりには、目を見張ってしまう。

 こんなに小さなうちに気を配ることばかりを考えていては、いずれつぶれてしまいそうな気がして心配ではあるが。

(そこは、私達が気をつけていくしかないかな……グローヴァー領なら、もうちょっとのんびりできるはずだしね)

 ここでは、王妃だけではなく他の貴族達の目もある。ディートハルトも、思うままに振る舞うのは難しいだろう。

 領地にいる時は、年相応の表情を見せることもあるから、ミリエラは彼がつぶれてしまわない様に気を配っておけばいい。

「──ミリエラ・グローヴァー嬢」
「はい、殿下」

 噛みたくないのか、ライナスの口調はゆっくりとしたものである。考えながら喋っているというのも伝わってくる。

「ありがと」

 結局、長い間沈黙した末、ライナスの口から出てきたのはそれだけだった。でも、それで十分。

「どういたしまして!」

 満面の笑みで、ミリエラは返す。ミリエラは錬金術師。だから、人が笑顔になるような発明に寄与することができればそれでいいのだ。

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