天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 重ねたディートハルトの手は、ミリエラの手より少しだけ大きい。きっと、これから先この差はますます大きくなっていくのだろう。

「ごめん、カーク。お腹空いたよね」

 敷物の側に到着するなり謝ったけれど、カークはむぅっと膨れた顔になった。反対側の頬にも生クリームがついている。食器が出ていないので、手づかみでいったらしい。

「そうそう、いっぱい剣術の稽古をするとお腹が空くんだよ! ディーもミリィも遅すぎだって!」
「ミリィのお皿は、これ。カークはこっち使って」

 カークの隣に座ったディートハルトは、丁寧におしぼりで手を拭いた。それから、バスケットから皿を取り出す。

 王子様だというのに、こういう時てきぱきと率先して動くのは、ディートハルトのすごいところだとミリエラは思っている。

「じゃあ、ミリィとってあげるね。カークはもうケーキは食べたんでしょ。じゃあ、こっちのパイはどう? 今日はミートパイとラズベリーパイだね」
「食う!」

 パイの中身がなんなのか一目でわかるように、グローヴァー侯爵家では、ミートパイは三日月形、アップルパイは、丸型に格子模様をつけると決まっている。

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