天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 隣に目をやったら、カークも同じようににやにやしていた。ぐっと親指を立てて合図してくるが、それはまだ早いと思う。

「──では、行きますよ。殿下、上を見ていてください」
「うん!」

 父が、発射台のスイッチにマナを流し込むと──ポンッ、と軽快な音がした。まっすぐに打ち上げられた花火は──中からパァンッと弾け、虹色の雨を降らせる。

 その雨の中央に浮かび上がるのは、煙で描かれたディートハルトとライナスの名前。

「うわあああああ、すごい! すごいよ、兄上! 僕の名前と兄上の名前!」

 歓喜の声をあげたライナスは、ディートハルトの袖をつかみ、空を指さして大騒ぎだ。けれど、数秒で虹色の雨は地に落ち、ふたりの名前もその後を追った。

「あーあ、もう消えちゃった」
「花火だからね」

 がっかりしたライナスの肩に、ディートハルトが手を置いて慰める。ふふっとミリエラは笑った。

「まだまだだよ、ライ。ミリィ達、すっごく頑張ったんだから! 皆、お願い!」
「かしこまりました!」

 屋敷の庭に集まっていたのは、使用人達である。

 事前に練習していた通りに、順番に発射台のスイッチを入れる。

< 271 / 279 >

この作品をシェア

pagetop