天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 手づかみでもしゃもしゃとパイを次から次へと食べてしまう。頬にパイ生地のかけらがついているのを指摘することもできなかった。

 

 その日の夕食も、食卓には妙な空気が漂っていた。

 本来使用人は家族と一緒に食事はしないのだが、マウアー一家は例外である。

 両親にかわってミリエラを育てていた間、オーランドとニコラのマウアー夫妻は、ミリエラをもうひとりの娘として扱った。

 別館で生活していたミリエラが本館に戻って来た時、マウアー一家も一緒に食卓を囲むことになったのは父の采配だ。

 父が世捨て人となっていた間もこの屋敷に残っていた使用人達にとっては、こうやって食卓を囲んでいる光景がとても嬉しいものらしく、マウアー夫妻の扱いについて苦情が出たことは一度もない。

 そんなわけで、父の正面にはオーランド、その隣にカークとニコラが順に並ぶ。父の隣に座るミリエラの正面はカークとニコラの中間だ。

「カーク、どうしたの?」

 秋に出産予定のニコラのお腹は、前に比べると大きくなっている。

 そのお腹を撫でながら、ニコラはカークの顔をのぞきこむ。

「なんでもないよ、母上」

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