天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 生まれた時に母を失い、父からは疎まれて育ってきた──その理由も今はミリエラも知っているけれど──ミリエラを気遣い、ニコラはふたり目を作ろうとはしなかった。

 もうひとり欲しがっていたオーランドも、弟でも妹でもいいと言っていたカークも、ニコラのその気持ちを汲んでいた。彼らの幸せに割って入ったミリエラを邪魔者扱いすることなく。

(……カークがいないのって、なんか、変)

 いつもはニコラとオーランドの間か、ミリエラの隣にいるカークが今日はいない。やっぱり、居心地が悪くてもぞもぞとしてしまう。

「パパ、ミリィも、もうお部屋に行くね」

 ぬいぐるみを抱えて立ち上がったミリエラに、父は手を差し伸べた。

「では、一緒に行こうか。お風呂の支度もしてもらわないといけないしね」
「でしたら、私が」

 二コラが腰を浮かせかけたけれど、父は彼女を制した。

「ニコラ、君は座っていなさい──ひとりの身体じゃないんだから。ミリィの入浴は、別のメイドに頼むから大丈夫だ」
「ありがとうございます、侯爵様」

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