天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 オーランドは、子供の頃から父と一緒に育ったと聞いている。代々侯爵家に仕えてきた護衛の家系なのだ、と。

 初めて野営の訓練に出かけた時、オーランドは崖から転げ落ち、左足をねんざして帰ってきたのだそうだ。命を落とさなかっただけよかったけれど、魔物退治は危険だとそれで痛感したらしい──というのは、以前こっそりと聞かされた話。

「父上、父上、早く、早く!」

 ぴょんぴょん跳ねているカークは、昨日夕方からずっとそわそわしっぱなしだったけれど、昨夜ちゃんと眠ることができたのだろうか。

「まったく、お前はうるさいな。では、行ってきます」
「あ、オーランド。これを持っていくといい──使うことにならないといいが」
「ありがとうございます、侯爵様」

 父は、オーランドになにか手渡していた。ありがたそうにそれを受け取った彼は、腰の鞄に受け取った品を放り込む。

「ねえ、パパ。オーランドになにを渡したの?」
「投げつけると、爆発する魔道具だよ。オーランドには必要ないだろうが、囲まれた時のための用心だ」

 前世で言うところの手りゅう弾のようなものだろうか。

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