天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 同行する子供はただの子供ではなく王子であるから、魔物討伐の訓練と野営の訓練とはいえ、さほど危険のない場所を選んでいるはずだ。

 だが、世の中には万が一ということがある。父がオーランドに渡したのは、そういう時の備えなのだろう。

「脱出路を作ることさえできれば、オーランドならふたりを抱えて逃げられるだろうからね」
「そっか。パパは、オーランドをものすごく信頼しているんだね」

 ぽん、と頭に手を置かれた。父は無言だったけれど、その手から温かさが流れ込んでくるようだった。

(……もしかしたら、パパもちょっと寂しいのかも)

 オーランドとカーク、ふたり揃って屋敷を留守にするのは初めてだ。ふたりがいないと、なんだか屋敷がずいぶん静かなように感じられた。

 

 あまりにも朝早く見送りをしたものだから、そのまま窓際のソファで眠ってしまったようだ。目を覚ました時には、お腹にブランケットがかけられていて、隣にニコラが座っていた。

「ねえ、ニコラ。オーランドも行っちゃって寂しいね」
「カークだけを行かせるわけにはいきませんからね」

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