天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 座ったニコラの手にあるのは、レース編み用の針と糸である。秋に生まれる赤ちゃん用の靴下を編んでいるところだ。

 冬の間は、せっせと帽子や手袋やおくるみをふわふわの毛糸で編んでいた。弟か妹かわからないけれど、どちらにしても楽しみだ。

「ミリィも編み物できるかな?」

 のぞきこんだニコラの手は、まるで魔法のように動いていた。左手に構えた糸の間を、右手に持った針先が器用に行ったり来たりしている。

 冬の間もニコラが編み物をしているのは何度も見たけれど、どこをどうしているのか何度見ても理解できない。

「やってみますか? でも、いきなり靴下は難しいでしょうね」

 ニコラに寄り添って座りこてん、と彼女の肩に頭を預けてみる。こうしていると、安心するのだ。別館で暮らしていた頃も、幾度もこうしてニコラに甘えたものだった。

(私にお母さんはいない、けど……ニコラがお母さんの代わりをしてくれたから)

 自分達のことより、ミリエラのことを気遣ってくれたニコラ。彼女の指は器用に動いて、みるみる小さな靴下が編み上がる。

「ミリィ、涼しくなったらパパにマフラーを編みたいな」
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