天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
「それは素敵ですね。きっと侯爵様も喜んでくださいますよ……では、練習してみましょうか」

 一度立ち上がったニコラは、ミリエラのために糸と編み針を持って戻って来た。

 棒針編みより、かぎ針編み針の方がミリエラにはわかりやすいだろうからと、まずは左手に糸、右手に先の曲がった編み針を持って編むかぎ針編みを教わる。

「……こうやって、糸を構えて……右手はこうして……難しいね、ニコラ!」

 ニコラが持っていた時は、くるりくるりと器用に糸を搦(から)めとっていた針先も、ミリエラの手にかかるとぎこちない。

「慣れたら、他のことを考えながらできるようになりますよ」
「本当に?」

 ええ、とニコラはうなずく。ミリエラはびっくりしてしまった。こうやって、糸を交差させるだけでもひと苦労なのに。

 母から子供へ受け継がれていく手仕事。もし、母が生きていたらこんな風にミリエラに編み物を教えてくれただろうか。

「むむぅ、難しいねぇ……」

 右手が引きつりそうになりながらも、ミリエラは音を上げようとはしなかった。ニコラとこうしてふたりきりという時間は、実はなかなか珍しい。

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