天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 いつも屋敷にはカークもオーランドもいるし、ニコラは本当の母親ではない分、少しだけ、ほんの少しだけミリエラも遠慮というものをしてしまう。

 本来、カークだけに与えられるはずだったふたりの愛情を、ミリエラが横取りしてしまっているのは薄々わかっていたからなおさら。

「……ニコラ大好き」
「まぁ」

 いつになく甘えたくなって、ニコラの肩によりかかる。大きくなり始めているお腹には触れないようにそっと。

 ニコラを独り占めできるのは、めったにない機会なのだから、この隙に堪能しておかなければ。

「冬になったら、ニコラにもマフラー編むね」
「まあ、嬉しい」
「パパ、喜んでくれるかなぁ」
「お喜びになりますとも」

 ニコラの手が、ミリエラの髪をそっと撫でる。母の愛そのものなのだろうと、安心してミリエラは微笑んだ。

 とはいえ、ミリエラの編み物修業は、夏の間続くことになりそうである。

 夏の間はレース糸で。涼しくなったら、毛糸を使って編もう、とかぎ針の動きに苦戦しながら考える。

 ミリエラの手は錬金術の素材を扱う時とはまるで違って不器用で、編んだり解いたりの繰り返しだ。

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