天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
(もう、私がお教えすることはなにも残っていないのかも)

 小さな肩に、ぎゅっと力が入っている。幼い子供は肩こりしないらしいけれど、こんなに力を入れていては、肩がこるのではないだろうか。

 ニコラの手が止まっているのに気付かない様子で、ミリエラは懸命に編み針を動かしている。

 ふふっと笑いが漏れそうになるのを懸命にニコラはこらえた。

(お嬢様にも、苦手なものがあるのね)

 勉強はできる方だし、錬金術には天才といっていいほどの才能を持っているミリエラだが、苦手なことも多い。

 字はまだ上手に書けないし、絵は本人に聞かないとなにを描いたものなのか見当もつかない。だが、ミリエラが完璧ではないところを見せると、ニコラは少しばかり安心してしまうのだ。

 生まれた時、侯爵から預けられたミリエラ。オーランドとふたり、精一杯の愛情を注いできたつもりだった。

 だが、いつからだろう。ミリエラの瞳に、幼子にはふさわしくない、悟りきったような光が浮かぶことがあるのに気付いたのは。

 それは、無邪気にカークが「妹が欲しい」とか「弟が欲しい」と言い出した時が多かった。

< 58 / 279 >

この作品をシェア

pagetop