天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました！２

　だって、ミリエラの側にいるのはこの国の王子なのだ。彼に挨拶しないなんて、どうかしている。

「ミリィになにか用？」

　首を傾げて、女性の顔を見上げた。

「……ねえ、私とあちらに行かない？　おいしいケーキがあるの」
「ミリィ行かないよ。カークとディーが持ってきてくれたお菓子があるもの」

　カークとディートハルトの背後に回り、彼らの後ろに隠れるようにした。

　残念ながら、今のミリエラは六歳になったばかり。こうでもしないと、女性の視線を遮ることができない。男の子ふたりも、ミリエラの前に出る。まだ、片方がディートハルトであることに彼女は気づいていないようだ。

「娘になにか用か」

　その時、ミリエラの背後から低い声がした。地獄の底からやってきた使者のような重低音である。ミリエラの肩に手を置いたのは父であった。

「……い、いえっ、なんでもありませんわっ！」

　今の今までミリエラに話しかけていた女性は、慌てた様子で立ち去ってしまう。

「パパ、ありがとう」