天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 マナを持たないオーランドのために、ふたりが結婚した時には、夫婦用の家に最高級の魔道具を並べて贈ったことも思い出した。

 ハーレー伯爵夫妻とアウレリアがいなかったら、きっとこの屋敷はいつまでも寂しいままだった。

「侯爵様? お声はかけさせていただいたのですが……」

 ふと気が付けば、お茶のワゴンを押したニコラが立っていた。そう言えば、少し前にお茶を運ぶよう頼んだのだった。

「ニコラ、君が動くことはないんだ。安静にしていないと」
「少しは動かないといけないんですよ。アウレリア様にも、同じように言われていたではないですか」
「そうだったかな──?」

 くすりと笑って、ニコラは手際よくティーセットを並べていく。体調がいいというのなら、ニコラの好きにさせておいた方がいいのかもしれない。新しい命の誕生は、とてもめでたいことなのだから。

「ミリエラは、どんどん大きくなるね」
「そうですね。どんどんお美しくなります──アウレリア様によく似ておいでです」

 ふたりの間に流れるのは、柔らかな空気。今は亡き人に、ふたりとも想いを馳(は)せている。

「──私は」

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