天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 それでも、つい、口を開いてしまうのは。今のジェラルドがとても感傷的になっているからかもしれなかった。

「私は──ミリエラに、幸せになってもらいたいと思っているよ」
「私も、オーランドも同じですとも」

 こんな風に、語る時間を自分から捨ててしまうことはなかったのだ。いくらミリエラと過ごす時間が増えたとしても、失った過去を取り戻すことはできない。

 いくら後悔したってもう遅いとわかっているのに、今が十分幸せなのに、その想いはいつだって簡単に復活してしまう。

「侯爵様、そのお手紙は?」
「──ミリエラへの求婚だ。この家とは、当面取引を中止する」

 ジェラルドの作る魔道具や素材を入手できなければ、困ることになるのはわかっている。だが、六歳の娘に縁談を申し込むような常識はずれな真似をしでかしたのだ。

 ミリエラを守るためにも、痛い目を見てもらわなければ。

「そうですね、それがよろしいですね」

 力強くそう言い残したニコラは、ワゴンを再び押して退室していく。同じように考える人間が側にいるというのは、こんなにも力強いものらしい。



 ◇ ◇ ◇

 

< 94 / 279 >

この作品をシェア

pagetop