天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 なんだか、ライナスのお尻のあたりに巨大なしっぽが見えた気がした。彼が犬だったならば、今はちぎれんばかりに尾を振っているだろう。

 大人達の思惑がどうであれ、ライナスはディートハルトのことが大好きらしい。

(……大人になっても、このままでいられたらいいんだけどな)

 とはいえ、未来の王座争いに首を突っ込むつもりもない。ミリエラはこの地で平和に暮らしていければそれでいい。父と、錬金術の研究にいそしみ、魔道具の開発をしながら。

 ディートハルトにしがみつき、頭を撫でてもらっていたライナスは、抱き着いたままこちらに顔を向けた。

(……ん?)

 その表情に、ミリエラは首を傾げてしまう。

 彼の目に浮かんでいたのは、五歳の子供にしては、あまりにも強烈な感情であった。

 どんな感情なのか、正確に読み取ることはできなかったけれど、まるでミリエラのことを憎んでいるとでも言いたそうな、そんなまなざし。

 ライナスにそこまで睨まれなければならないいわれもない。なんで、そんな顔をしているのだろう。けれど、ライナスの表情は、ディートハルトの目には入らなかったようだ。

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