私たちはこの教室から卒業する。
 僕は三年間、葵と同じクラスだった、彼女の事が好きだった。ひとめぼれ、ではないけれど、最初から可愛いなとは思っていて、少しずつ彼女の魅力に惹かれていった。どんなところに惹かれたのかというと、周りが面倒くさがる事でも、真剣に取り組むところとか、優しいところ、あとは、か弱そうに見えるのに強そうな性格とか。いっぱいありすぎて、上手くまとまらない。

 今まで特に好きと感じなかった性格や誰かがしていた仕草も、好きになった葵がする事だから、それらが全部好きになった。

 本当に葵の事を考える時だけは、上手くまとめられなくなるし、僕が彼女に言った言葉や行動で傷ついたりしてないかな?とか、些細な事も気になりすぎて、もうどうしたら良いのか分からなくなる。もう、それくらい好き。

 そんな彼女が、夢の中の人だけど、僕の知らない人と親密になっていくのが嫌だった。

 放課後、眠る葵をすぐに起こせば良い事なのに、それで嫌われたら、もう僕は立ち直れないなとか考えていたら出来なくて。二人が夢の中で会っている時間、教室に入る事すら出来なくて。

 僕は放課後、よく玄関で待っていた。彼女が玄関に向かってくるタイミングで靴紐を結び直すふりをしたりして、ちょうど今帰るんだ。偶然会ったね! みたいな雰囲気を出して。

 いつものように葵をこっそり待っていた時、雨が降っていて、葵が「傘を忘れた」って困っている時に、傘を貸せたりもしたから良かった。僕は雨の中、走って帰ったけど。

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