カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない~
哀れみ。

幼馴染としての情。

蒼空が昔から私を好きだったと知った優越感。

いや、そんな感情ではない何かが、蒼空との結婚に踏み出させた。

それがいったい何だったのか、今の私には二人に説明することができない。

けれど一つだけ確かなことがあるとすれば。

「大丈夫だと……思ったんです」

そう、これしかない。

「確かに一般常識的に考えれば、今回のことは絶対にありえないことだとはわかっています。けれど……上手く言えないんですけど、この選択をしてしまっても大丈夫だって、直感的にそう感じたんです。浅はかだと言われるかもしれませんが、そう思っちゃったんです」

「菱崎……」

私の言っていることは、何の根拠もないただの感情論に過ぎない。

有馬さんが絶句してしまうのも理解できる。

こんなことをしでかしてしまったのだから、どんな処分でも受ける覚悟をしなければならないだろう。

有馬さんの溜め息にぎゅっと固く目を瞑ったが。

「なんかわかる気がするなぁ、それ」

そう言ってくれたのは、やはり私の理解者である杏だった。
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