カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない~
「はぁ?わかるわけないだろ、そんなもの」

「男にはわからないんですよ。特に今の有馬さんには絶対にわかるわけありません」

「なんだって?どういう意味だよ」

「いいんですか?今ここで説明しちゃっても」

「っ……」

杏の挑発的な問いに、有馬さんは何故だか言葉を詰まらせた。

「今の有馬さんには何を言っても絶対に理解できないと思いますけど、女にはあるんですよ。そういう直感的な何かが。それに由華が大丈夫だって思ったんならいいじゃないですか。それこそそれも由華の人生です。有馬さんの正論を由華に押し付けてしまうのは違うんじゃないですか?」

いつもの杏ならば、こういう面倒なことは上手くスルーして場の空気を変えようとするのだが、今日はやけに有馬さんに好戦的な態度をとってしまっている。

私のせいで二人に亀裂が入ってしまうことだけは避けたいのだが、情けないことに私も言葉が見つからない。

「由華の結婚という、想像もできないくらい大きなイレギュラーはありましたけど、ビジネス的には何の問題もありません。皆様満足してお帰りになりましたし、何よりも由華の結婚式プランは本当に最高で、良いお式でした。プライベートなことに踏み込むのはやめましょう」

私の心情を察してくれたのか、杏は有馬さんに微笑み圧を吹き飛ばしてくれた。

「ほら、新郎さんが待ってるわよ。早くいってあげたら?」

「……納得はできないが、こうなってしまった以上、今はそうするほかないだろうな」

有馬さんの言葉に満足そうに笑った杏と、仏頂面の有馬さんに「申し訳ありません。ありがとうございます」と頭を下げると、私は蒼空がいるフロアへと足早に向かったのだった。
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