隣の席に座るヤンキー男子の癖は甘噛みです
7.うつむいて現実逃避
「アンタ授業中さぁ、英貴くんのこと見つめてるでしょ?」
放課後、クラスメイトの女子生徒に呼び出された。
階段を登っていった最上階の踊り場。
とうぜん、人の気配はない。
目尻をつり上げ、腕組みをしながら私を睨んでくる。
彼女は一人だけで、他に生徒の姿はない。
この子はクラスでも人気のある女子生徒。
カーストの中の一人で、若林くんに片思いしてるらしい。
彼と親しく話てる私のことが、前から気に入らなかったようだ。
「アンタみたいな地味子の、どこがいいんだろ?」
黒髪で清楚系の美人さんだけど、耳にピアスで制服のスカートも短い。
男子に好かれる外見なのは認めるけど、話し方がキツイのでちょっと嫌だな……
一方的な恋心なのか、それとも若林くんと両片思いなのか……
彼女は勘ちがいしてる、私はアナタの恋のライバルになんかなれないよ。
対人スキルがレベル1の、地味子ですから。
こんなふうに心の中で思ってても、口にうまく出せないコミュ症なの。
「なんで黙ったままなの? マジでわかってる?」
「……」
言葉が出てこない……
「言っとくけど、みんな知ってるから!アンタが居眠りしてる英貴くんのこと、見つめてるって!」
「……」
「しかも、ガン見してるでしょ!」