隣の席に座るヤンキー男子の癖は甘噛みです
7.うつむいて現実逃避


「アンタ授業中さぁ、英貴くんのこと見つめてるでしょ?」


 放課後、クラスメイトの女子生徒に呼び出された。


 階段を登っていった最上階の踊り場。

 とうぜん、人の気配はない。


 目尻をつり上げ、腕組みをしながら私を睨んでくる。

 彼女は一人だけで、他に生徒の姿はない。


 この子はクラスでも人気のある女子生徒。

 カーストの中の一人で、若林くんに片思いしてるらしい。

 彼と親しく話てる私のことが、前から気に入らなかったようだ。


「アンタみたいな地味子の、どこがいいんだろ?」


 黒髪で清楚系の美人さんだけど、耳にピアスで制服のスカートも短い。

 男子に好かれる外見なのは認めるけど、話し方がキツイのでちょっと嫌だな……

 一方的な恋心なのか、それとも若林くんと両片思いなのか……


 彼女は勘ちがいしてる、私はアナタの恋のライバルになんかなれないよ。

 対人スキルがレベル1の、地味子ですから。

 こんなふうに心の中で思ってても、口にうまく出せないコミュ症なの。


「なんで黙ったままなの? マジでわかってる?」


「……」


 言葉が出てこない……


「言っとくけど、みんな知ってるから!アンタが居眠りしてる英貴くんのこと、見つめてるって!」


「……」


「しかも、ガン見してるでしょ!」



< 12 / 27 >

この作品をシェア

pagetop