隣の席に座るヤンキー男子の癖は甘噛みです


 まったくその通りで、何も言い返せない。

 というか、言葉がでてこないよ……


 ただ、あのことは知らないみたい。

 隣の席に座るヤンキー男子の癖は、爪を甘噛みすることだって。

 その様子を、私が見つめていたって知らないんだ。


「気持ち悪いから、寝顔を見つめるとかマジでやめてくんない?」


 私は黙って首を縦に振り、うなずいて見せる。

 話をしなくても、これで私の意志を相手に伝えられたかな。


 彼の癖を隠し通すことができれば、それでいいよね。
 
 などと思っていた矢先、さらに理不尽な要求を突きつけてくる。


「アンタのほうから、英貴くんを無視するようにしなさいよ」


「……」


「そうしたら、彼はウチらと楽しく放課後まで一緒に過ごせる~っ!」


 考えてみれば、若林くんは休み時間も昼休みも隣の席にいる。

 返事をあまり返さない私に、色々と話かけてくれていた。

 私から無視すれば、そんな時間もすべてなくなる。

 目の前の彼女がいるグループで、楽しくキャンパスライフを過ごせるだろう。

 隣の席に座るヤンキー男子が、私から離れて行ってしまう……



「だめ……」



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