隣の席に座るヤンキー男子の癖は甘噛みです
2.隣の席がヤンキー男子
「最悪……」
ザワザワと騒がしい教室。
私は、周りに聞こえないような小声で無意識につぶやいてしまった。
「はぁ? 最悪ってなんのことだ?」
わわわわっ、聞かれてしまった!
隣に座るヤンンキー男子が私に話かけてきたよっ!
どっ、どどど、どうしようっ!
ここは、何とか話をそらすしかない!
「あの、その……」
怖くて言葉がでてこない。
もともと、対人スキルがレベル1の私。
初対面のヤンキー男子と会話のキャッチボールなんて無理だよ。
「どうしたんだ、ジミーちゃん?」
私に向かって、ジミーちゃんとか馴れ馴れしく言ってくるけど……
浅野 花織(あさの かおり)が私の本名。
どこにも、ジミーちゃん呼ばわりされる要素はない。
なので、恐る恐るだけど聞いてみる。
「すいません、ジミーちゃんとは何のことでしょう……」
顔をうつむかせ、視線を合わせないまま私は小声で聞いてみた。
「地味子だからジミーちゃんだろ?」
黒縁メガネにボサボサの長い髪、顔の表情を隠すような前髪と猫背。
高校生になっても、やっぱり外見は地味子のまま。
入学早々、ヤンキー男子に不快なアダ名を付けられてしまった……