隣の席に座るヤンキー男子の癖は甘噛みです
10.お前みたいな奴、嫌いじゃない
大型連休も終わって、あれから二週間が過ぎていた。
五月の中旬、今日は金曜日。
放課後の教室に、クラスメイトの姿は無い。
窓際からグラウンドを見つめると、部活の生徒たちが後片付けをしてるだけ。
すでに太陽は赤く染まり、山陰に沈む準備をしてる。
「私たち、まだ高校一年になったばかりだよ……」
不安な表情でつぶやきながら、私は立ったまま一人で教室に居残りしてる。
「よっ、元気だったか!」
背後から聞き慣れた声がしたので、急いで振り返る。
開いたままの教室の扉から、彼が姿を現す。
今日の放課後、処分が言い渡されるため、若林くんはこの時間帯に呼び出されていた。
職員室で、生徒指導の先生から話を聞いて戻ってきたみたい。
これで、来週から復学できるね。
「おはようございます……」
私は胸元で両手を合わせ、足を内股にモゾモゾしながら小声で話す。
「ジミーちゃん、笑わせるなよ!もう夕方だぜっ!」
クスクス笑いながら歩み寄ってくるのはヤンキー男子。
茶髪ピアスの若林くんが、目の前に立っている……