隣の席に座るヤンキー男子の癖は甘噛みです


「えっ、誰なの?」


 週明けの月曜日の朝、教室に入っても私だって気づかれない。

 ザワザワするクラスメイトの中を歩いて、自分の席に座った直後、歓声があがった。


「うっそー、あの地味子がっ!」


 縁無しのメガネに買い換えて、気分もリフレッシュ。

 ボサボサだった黒髪も、ふんわりストレートに変化。

 毛先が肩に掛かる程度の長さで、清潔感もある。

 背筋を正し、前を向いて歩く姿も新鮮だ。


「わわっ!みなさん、どうしたんですか……」


 なぜか座席の周りをクラスメイトに囲まれ、質問攻めにあってしまう。

 前髪で顔を隠し、猫背でうつむく地味子の姿はここにない。

 これもすべて、ヤンキー男子のおかげだよね……


 可愛い寝顔で爪を甘噛みする彼、そのことがキッカケになって今日がある。

 好きな人の好きな癖は、私しか知らない。


 本人も気づいてない、甘噛み姿を思い出しながら彼を待つ。


「よっ、元気でやってるか!」


 聞き覚えのある声を耳にして、私は振り返る。



 でも、そこにヤンキー男子の姿はなかった……



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