隣の席に座るヤンキー男子の癖は甘噛みです


「すいません、私は浅野花織といいます……」


「そうなのか?まあ、地味子だからジミーでもいいんじゃね?」


「はぁ……」


 勇気を振り絞って私の名前を言ってみる。

 でも、ジミーで押し通された……

 何も言い返せないまま、私は黙り込んでしまう。


「俺は、若林 英貴(わかばやし ひでき)だ」


「若林くん……ですか……」


 相手の顔を見ることもできない私は、うつむいたまま名前だけを耳にする。


 教室に担任の先生が姿を現した。

 気づいたクラスメイトたちは、口を閉じて静かにする。


 高校一年生になってからの、学校生活ついて話を聞いたあと自己紹介が始まった。

 内気な私は、人の前で話すのが苦手。

 しかも、自信がないので顔をうつむかせ小声しかでない。


 周りの人には、ブツブツと何か言ってるぐらいの印象しか与えないだろう。

 第一印象は大事だってわかってるけど……

 対人スキルがレベル1の私には無理。


 この日は、簡単なお話と新入生の歓迎会だけで下校になった。

 隣の席を見ると、若林くんはすでにいない。


 きっと、体育館で開かれた歓迎会の前に帰ってしまったのだろう。

 これからの高校生活が、色々と不安に思ってしまう。


 とくに、隣の席に座るヤンキー男子が気になってしかたない……



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