鳳条先輩は私への溺愛が止まらないらしい。
え? え………


「………やれるもんならやってみろ。…桜妃は、俺が連れて帰る。」


そう言って、強引に手首を引っ張られる。痛い、痛いよお兄ちゃん。


お兄ちゃんに引っ張られて、鳳条先輩の横を通り過ぎた時、私は急いで鳳条先輩の方を振り向いた。


「あ、のっ、鳳条先輩っ!ごめんなさい!」


「…大丈夫。」


優しい鳳条先輩は、嫌な顔ひとつせず、いつものように笑ってくれた。


良かった、怒ってないみたい。


鳳条先輩の姿が見えなくなってから、私はまた前を向き直った。


そして………家路を、無言で歩いていくお兄ちゃんの背中を黙って見つめていた──。
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