鳳条先輩は私への溺愛が止まらないらしい。
けど、その絶対、は絶対ではなかった。


巻き込んだんだ、俺は桜妃を。


鳳条の言葉に小さく頷いて、俺は1度深呼吸をした。


「……鳳条……」


「はい。」


「桜妃の額を見ても、どうか桜妃を受け止めてやってくれ…。」


意味が分からない、と言った表情。


だけど、すぐにいつも通り、澄んだ瞳で俺を見つめた。


「俺はどんな桜妃を見ても気持ちは変わらないって誓えます。」


「…あぁ。なんかあったら、相談しろよ。」


「はい、じゃあ、失礼します。」



去っていく鳳条の背中を見て、俺はそっと願いを託した。


頼むぞ……と。



「お兄ちゃん??」


俺を心配したのか、玄関のドアの隙間から顔を覗かせた桜妃。


「今行く。」


俺の言葉に、桜妃は嬉しそうに笑顔を浮かべた。
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