鳳条先輩は私への溺愛が止まらないらしい。
放課後になって、淡い期待を残しながら資料室の椅子に腰を下ろす。


静かな資料室には時を刻む針の音が響くだけ。


……桜妃は来てくれるだろうか。


会いたい。


自分で言いもせずに呼んでおいて、来てくれることなんて普通はない。


だけど……


ガラッとドアが開いて……


息を整える桜妃の姿をみた瞬間、胸の奥あたりが変な音をたてた。


俺に怯えているのか、それとも警戒心が強いのか、全然笑わない桜妃。


俺が……桜妃を傷つけることなんてないのに。


自然とそう思った。


だけど……それぐらい警戒心が強い方がいい。


他の男になんか絶対渡さない。


連絡先に『成瀬 桜妃』が登録されたのを見て、思わず頬がだらしなく緩む。
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