鳳条先輩は私への溺愛が止まらないらしい。
視線を感じた先を見ると、琴莉ちゃんが泣きそうな、辛そうな、そんな表情を浮かべていた。


「桜妃、ちょっと来て。」


「うん。」


私の手を引いて、立ち上がった琴莉ちゃんは、そのまま人気のない方へ歩いていく。


「ねぇ、桜妃?」


そして振り向くと、私の両手をぎゅっと握って、その場にしゃがみこんだ。


「いいの?鳳条先輩が笑いかけたって、あれ、絶対桜妃にでしょう?桜妃以外にするわけないじゃん。」


「でも、私よりあの子の方がよっぽど可愛かったし……」


はぁぁ、、と深くため息をつく琴莉ちゃん。


「嫌なくせに、」


「え?」


「例えば、借り物競争のジンクス」


琴莉ちゃんは、そう言いながらグラウンドの方を指差す。


「鳳条先輩が 好きな人 のカードをひいて、桜妃以外のめちゃめちゃ可愛い女の子をつれて、ニコニコしてたら?」
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