明日には居ない君の物語
「涼香…」

そんなに声震えちゃって、いつもの威勢はどうしたのさ

「要、落ち着いて。もう、いいの。いいんだよ。だって、私身体弱いもん。人間、いつかは死ぬんだし、その時期が少し早くなっただけ」

「涼香ちゃん、君は生きる事を諦めてはいけない。君はまだ若いんだ。病気が完治する事だってある。君にはまだ未知数の未来が待ってる」

ううん

そんなのないよ

「そうだよ、涼香。親父の言う通りだ。もういいなんて言うなよ。諦めんなっ…」

「私、喘息でさ、今まで生きてきて辛かった。みんな楽しそうに体育やってるのに、私はまともに運動したことない。合唱コンクールの練習の時だって、張り切って歌ってたら運動した時並に苦しくなってそのまま学校早退して病院行きだった。けど、それでもみんなと一緒に居たかった。運動出来なくても、周りと同じことが出来なくても、少しでも近い存在で居たかった。だから、今は残された時間を楽しみたいの。このまま、やりたかった事を残したまま死にたくない。せめて、今やりたい事の半分くらいは実行したい」

私は話しながら、頭ではわかっていたはずなのに、やっと感情として感じて涙が止まらなくなっていた。
< 48 / 87 >

この作品をシェア

pagetop