明日には居ない君の物語
「私は入院したくない。この気持ちは変わらない」

私の目は両親の目と冷たく、切なく交差する…。

恐怖で冷えていくのではと思ってしまう私の体を要の温かい手が温めてくれる。

「はぁ…わかった。涼香はどんなに言っても一度決めたら意見を変えないもの。ここでわたしがどうこう言ってもこの子は折れない。だから、秋来先生、入院はせず自宅療養の方向でお願いします」

「お母さん…あ、ありがと…っ」

認めてくれた嬉しさからか、涙が止まらなくなる。

「いいのよ。だって、健康な体に産んであげられなかったお母さんにも責任はあるもの」

“それに、涼香の強情なところは紛れもなくわたし譲りだし…”とお母さんがぼやく。

強情ではない、はず……?

「じゃあ、涼香ちゃん。通院は1週間に1回必ず来ること。心配だったら要を連れて来てもいいし、薬飲んでも辛い時は必ず誰かと一緒に来ること。これが条件…いいかい?」

秋来先生の話にコクリと頷く。
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