最愛の日々にピリオドを、



大学2年生になって、20歳になった途端に料理をできるようになりたいと母に伝えたら、信じられないみたいな顔をして二度見されたのを覚えている。
それからすぐに、めんどくさい笑みを浮かべて「胃袋掴んだら、勝ちだもんねえ」って言っては本当に何から何まで教えてもらった気がする。
どうやら母は、お父さんを胃袋で仕留めたらしい。

おかげさまで今ではそれなりの料理をそれなりのレシピがあれば作れる家庭的な女子になれたので、これからの人生においてアピールしたいと思っている。



「―――そういうとこだよなあ」

「なに?」

「全部。俺のいないところで勝手に解決しようとして、8割成功するんだけど、2割失敗して俺に泣きつく」

「泣きついてはない」

「そういう不器用で素直じゃねえところも、お前のいいところだよ」

「でもこういう可愛げのない女をずっとそばに置いているもの好きは世の中の1割にも満たないと思うわよ」

「じゃあ俺はレアってことだから、大切にされてたってわけか」

「そう、だから私はそうやって婚期を逃してくの」



はは、夕雅が目を伏せて笑う。
4年もこんな素直じゃない女を横に置いておいた物好きは、これから先出会う素直でかわいらしい女の子たちと関わって、好きなタイプとか好みが変わっていくのだろう。
私だって、案外ころっと素敵な人に出会って超絶優しく大切にされる未来があるかもしれない。

たかが22年間の人生ですべてを決めていいとは限らない。これまで出会ってきた人の数より、これから出会っていく人のほうがおそらく多いから。


だからお互い、ここにとどまることを必要とはしないのだ。



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