最愛の日々にピリオドを、
「結婚式、呼んでくれんの?」
「来たいの?」
「はは、ぜってー行きたくねえ」
「……どっちよ」
「この世の誰よりも呉羽の花嫁衣裳を見たくねえ」
「ほんっとに最低」
「なんでお前がどこの誰かもわかんねえ男のために着飾ってるの見なきゃいけねえんだよ、拷問か」
「………」
「だから、案内とか絶対送ってくんなよ」
「……だから、夕雅のせいで婚期逃したから結婚できないんだって」
「うん、それでいいよ呉羽は」
そんな本気なのかわからない冗談を、いまさら口に出さないで欲しい。
じゃあなんで引き留めようとしてくれなかったのか、今までそんなやきもち晒してこなかったのか、教えて欲しい。
覚悟を決めて最後を過ごしているのに、決意がぐらついてしまいそうだ。
「……夕雅もさ、」
「ん?」
「……いや、あんたは絶対結婚できるよ、全然、想像つくし。子どもとか好きだし、案外いいお父さんになるんだろうね」
「めちゃくちゃ褒めるじゃん」
「なんだかんだ優しいところあるし、大事にするタイプでしょう。結構一途だし、まあちょっとたまにいらってくるけど、それもあんたの良さだし」
「上げて下げんな」
「想像つくけど、見たくはないから、私もあんたが結婚したとかいう情報は絶対に要らない」
「………」
「でも、一番幸せになってほしいなあ」
なんてね、
私は冗談が上手くなくて、そんなヘタクソな言葉を夕雅は全部拾うから。そうやって些細なことも全部気づいて、解ろうとしてくれるところが、この人のいいところで。
視線が絡んで、はは、って無駄に笑ってみせたら、おんなじ顔をして笑われた。
私たちの空気は、やっぱりどこかぎこちなかった。