最愛の日々にピリオドを、
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「最後の晩餐にデザートがないとか信じらんねえよな」
「なんで買い出し行ったときに気づかないかなあ」
「おまえだって気づかなかっただろ」
「家にアイスの一つや二つくらいあると思うじゃん」
「引っ越し間近の男の冷蔵庫なんてな、酒くらいしかねえの」
「使えねえなあ」
「文句言うなら手土産のひとつくらい持ってこいや」
「めんどくさいからアイス代くらい出してやるわよ」
「へえ、太っ腹じゃん。ごち」
扉が手動なこのコンビニも使い慣れたもので、おそらくこいつのことを店員さんは把握してるだろうし、たまに一緒についてくる私のことも把握されてるかもしれない。
あのアパートを中心にして三方向にあるコンビニの中で、ここが一番アイスの種類が豊富なのだ。
「くれはー、俺これも食う」
「えー、全然デザートじゃないじゃん」
「つまみだつまみ、チューハイも買い足すか?」
「どんだけ飲むつもりよ、あの冷蔵庫にまだ4本は入ってる」
「そんなあったっけ」
アイスを物色している私のところにスナック菓子をふたつ抱えてやってきた彼は、悪戯に笑っていつものアイスを指さす。
「これとこれだろ」
「え、正解。二択だった」
「じゃあこのふたつ買って帰ろうぜ」
「夕雅は?」
「半分ずつ食べようぜ、二得」
「ふうん、アリガト」